File3 朝日村 “はたおりと自然農にいそしむ暮らし” 永井 泉さん
千葉県から長野県松本市へ移住。より自給自足的な暮らしと自然豊かな環境での機織りのためにと、東筑摩郡朝日村の一軒家へ移り住んだ永井さんの暮らしをご紹介します。
きっかけは千葉にいる時に出合った一冊の本。「完全版 自給自足の自然菜園12ヶ月」。
環境に優しい野菜作りや米作りはもちろん、ニワトリの飼い方やカモのさばき方に至るまで、図解でわかりやすく書かれているこの本が、今もなお大事にしている永井さんのバイブルです。この本の監修を務めた竹内孝功さんに感化され、竹内さんが安曇野で講師をしているという自然農のスクールに一年間、千葉から月に1,2度通いました。けれども、千葉~松本は遠いことと、「実際に畑と田んぼをやりながら暮らしたい」という気持ちから、7年ほど前に松本市へ移住。引き続き自然農のスクールに通ったのち、松本市波田の自然農法国際研究開発センターの育種部に勤めました。朝日村のご友人から空き家(現在お住まいの一軒家)を紹介され、4年前に「農と染織」自給自足に近い朝日村での暮らしをスタート。千葉とは違う朝日村ならではのご近所付き合いも楽しんでいらっしゃるとのこと。
現在はご近所から借りた農地など、田んぼ25a、畑1,5aを農薬や化学肥料を使わずに管理しています。人手が必要な稲刈りなどは、お友達が手伝いに来てくれるそうですが、普段は一人での作業。野菜セットを作って、家族や知人に送ったり、三ヵ所の直売所で販売しています。今年は朝日アグリチャレンジセンターが「朝日村のお酒をつくろう」と企画した‘酒米プロジェクト’で、仲間やサポーターさんたちとの共同作業で酒米作りにも挑戦しています。
写真左:かわいらしい綿の花。 写真右:あずき
標高約800m。栽培している野菜は20種類以上。野菜も米も、自然農法センターの種子を購入することも多く、珍しいところでは、‘白馬の白キュウリ’‘韓国カボチャ(一番上の写真中央の黄緑色のズッキーニのような容姿)’‘かちわりかぼちゃ(同写真右のとがったグレーのかぼちゃ’など。 お米は‘はたはったん’‘ゆうだい21’自然農でも作り易く、何より美味しい品種だそうです。
永井さんは千葉で織物の専門学校に通い、その後は、綿栽培~天然の藍で染めた織物を作っている鳥取の工房で学びました。自然農で綿を栽培し種を取り除き、昔ながらの道具を使って糸から紡ぐため、ひと冬でも1,2反しか織れないそうです。思い描いていたライフスタイルでは、もう少し機織りの時間を持てるはずでしたが、実際には春~秋までは農作業に忙しく、機織りは冬仕事に。作品は主に首都圏で年に数回行われる展示会に出していますが、今年はコロナの関係で発表の場もないとのこと。今後はもう少し機織りの時間を増やし、大事に受け継いできた昔ながらのはたおり機を使ったワークショップを自宅で開催したいということです。朝日村で、農と染織と真摯に向き合う永井さんの暮らしは、コツコツと人生の織物を丁寧に織り続けているようでした。