信州農ある暮らしお宅訪問ブログ

長野県内の‘農ある暮らし’実践者を取材しご紹介します。また‘農ある暮らし’の魅力を様々な角度からお伝えするブログです。

File14“木曽ならではの丁寧な暮らし” 木曽郡上松町 二宮 美香さん

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名古屋育ちの二宮さんが、上松町の地域おこし協力隊として移住してきて今年で5年目。任期を終えた今も上松に定住し、特産品であるエゴマ栽培と向き合っている様子をご紹介します。

 

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収穫・脱穀風景(左)とエゴマの穂(右)

地域おこし協力隊の二宮さんの任務は「特産品の開発」。
木曽地域には、エゴマや五平餅、朴葉まき、すんき漬け、赤かぶ漬けなど、昔から愛されてきた特産品があります。栽培から加工、商品開発、販売に至るまで携わる、そういった活動を通して、地元の方々との交流も深めてきました。

 

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服飾系の短大を卒業し、アパレルの仕事に携わっていた二宮さんは、最初は野良着にも気を使っていましたが、ご近所さんに「エプロンしないの?」「そんなオシャレしてどこ行くの?」と声をかけられたこともあったとか。今では”そこに合った格好がベスト”という結論に至り、ごく普通の長靴にもんぺ、エプロンに腕カバーといったスタイルに落ち着きました。また、かつて養蚕が盛んだった木曽で、厳しい冬を過ごすために作られてきた伝統工芸品の“ねこ”に魅せられ、ねこ作りも本格的に始めました。“ねこ”とは、着物をほどいた古布と中入れ綿を手縫いで仕立てる背中側だけの袖なしハンテン。漬物作りや農作業の邪魔にならず、炬燵や布団に入っている時にも背中を暖めてくれる優れものだそうです。
農作業に使用する道具も極力この地に古くからあったモノを選び、大切に使っている、そんな二宮さんの木曽暮らしトータルコーディネートからも、センスが伝わってきます。

 

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昨年は、新たに休耕田を借りてエゴマ栽培を始めました。新月に合わせて5月に種をまき、6月下旬から7月上旬に定植。ちょうどこの頃は‘朴葉まき’の製造ピーク時と重なりハードですが、その後の管理作業は草刈りくらいで、10月の終わりから11月のあたま頃に収穫時期を迎えます。機械化も試してみたものの、雑草が混入してしまうため、手作業で丁寧にやらないとできない仕事。揺らして種が落ちてしまわないように、ブルーシートを際まで持っていき、そこへ鎌で一株一株刈り倒してから、シートの上で叩いて脱穀します。 

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とうみがないため、自然風(ないときは扇風機の風)を当てながら、バケツからバケツへと数回移し替えてゴミを吹き飛ばしたものを網戸に広げて乾かします。5aでやっと30㎏ほどのエゴマが採れるそう。これらは地域の加工所にて、エゴマ油を搾ったり、五平餅のエゴマだれなどに加工しています。
今では少なくなったこの地域のエゴマ生産者のみなさんとエゴマ情報を交換したり、加工所で元気なおばあちゃんたちから様々な知恵を伝授してもらったりと「地域おこし協力隊として入ってきたことで、すんなり地元に溶け込み、地域の方々に可愛がってもらえた」

 

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住まいは駅のすぐそば。以前は「見られていること」が気になったけれど、今ではそれが安心感につながっています。畑の目の前で電車が見えるのも、魅力です。
半径500m以内で、畑で栽培している野菜やルバーブ、旬の山菜にキノコ、柿(干し柿)…など、買わなくても、豊かな暮らしができること。そんな信州ならではの暮らしが毎年楽しいと感じています。

  

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 二宮さんが畑に出るときは畑へ、今は大半をご主人の工房で過ごしているチャボ。

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二宮さんのご主人は、長野県上松技術専門校木工科で木工技術を学び、"椿井木工舎"としてここに工房を構え、シンプルで美しい生活雑貨や家具をつくり出していらっしゃいます。材料の調達から販売に至るまでの全ての工程をお一人で、こだわりを持って取り組む姿や、そこから生まれてくる作品からは、この静かで豊かな暮らし、モノ作りへのブレない思いが伝わってきます。
木曽の伝統や文化を大切に守りながら、二宮夫妻ならではの洗練されたシンプルな日々の暮らしがここにはありました。

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